今日は、一人のお客様(Mさん)のお話です。
私にとって、忘れられないお客様のおひとりです。
はじめて出会った日のこと

Mさんと出会ったのは、私が会社員をしながら副業で腸セラピーを始めた頃でした。
まだ施術経験も少なく、「本当にこの方のお力になれるのだろうか」と、不安を抱えながら施術させていただいたことを今でも覚えています。
Mさんは、便秘や不眠、そして心のつらさを抱えてご来店されました。
お話を伺おうとしても、ずっとうつむいたままで、ほとんど言葉が出てきません。
私はまず、お腹にそっと触れてみることにしました。
驚くほどお腹はパンパンに張り、まるではち切れそうな風船のようでした。
少し触れるだけでも「痛い…」とおっしゃるほどで、腸セラピーを行える状態ではありませんでした。
その日は深呼吸をしていただきながら、ただただやさしくお腹をさすり続けました。
その後、少しずつ施術を続けるうちに、お腹はやわらかくなり、体調も落ち着いてきました。
そしてある日、「もう大丈夫です」
そう言ってサロンを卒業されました。
もちろんうれしい気持ちでしたが、私の中では良くなりはじめたばかりだったので、「もう少し続けた方が安心かな」という思いもありました。
一度卒業したあと、再びご来店

約1年後、Mさんから再びご連絡をいただきました。
「また調子を崩してしまって、仕事も休んでいます。もう一度良くなりたいです」
施術を再開しましたが、心の状態が不安定な時期だったこともあり、思うように通うことができずに戻ってしまい、なかなか変化につながりませんでした。
そこで二人で相談し、
「2週に一度の施術では不安定になってしまうので、不安定なる前に施術を受けよう」
ということになりました。
週に一度、心や身体が限界を迎える前に整える。
このペースがMさんにはとても合っていました。
定期的に身体をゆるめていくことで、少しずつ気持ちも安定し、施術後に笑顔が見られる日が増えていきました。
「お腹から黒いものが出てくる感じがする」

そんなある日、Mさんが不思議なお話をしてくださいました。
「お腹から黒いドロドロしたものが出てくる感じがして、怖かったんです」
もちろん、本当に何かが出てきたわけではありません。
Mさんが、ご自身の内側で感じた感覚を、そのように表現してくださいました。
東洋医学では昔から、「お腹には感情が宿る」と考えられています。
科学的に証明されていることではありませんが、施術を続ける中で、涙があふれたり、「心が軽くなった」と話される方もいらっしゃいます。
実際、12年間ずっとお客様のお腹に触れてきた日本腸セラピー協会代表は、こういった経験をされたお客様に多く出会っていらっしゃいます。
東洋医学では、小腸は「喜び」、大腸は「悲しみ」と関係しているとされます。
ストレスが溜まっていたり、心にモヤモヤが残っているとき、腸もまた硬くこわばっていることが多いのです。
腸にふれていくと、まるでその感情がすっと溶けていくような感覚になることがあります。
だからこそ、涙が出たり、深い呼吸ができるようになったり。
それは「感情のデトックス」が起きている瞬間なのかもしれません。』
参考:日本腸セラピー協会ブログ
なぜ腸セラピーは「言葉にならない体験」になるのか?12年施術してきた私の実感
その後も、
「今日は少し黒いものが出せた気がします」
「少し出たけれど、また引っ込んでしまいました」
そんな感想を聞かせてくださいました。
そして、その感覚があった日は決まって、
「モヤモヤがスッキリしました」
と、やわらかな笑顔で帰られるようになりました。
ある日は、
「子どもの頃の私が、うずくまって泣いていました」
とも話してくださいました。
お腹をゆるめるたびに、ずっと心の奥に閉じ込めてきた気持ちが、少しずつあふれてきたようでした。
施術中には毎回涙を流されていましたが、回数を重ねるごとに気持ちが安定してきたことで、医師と相談しながら服薬も7個から2個へと少しずつ減っていきました。
「私、生まれてきてよかったんだ」

そしてある日、
「今日は、もう泣かない気がします」
そう話された施術のあと、忘れられない言葉を聞かせてくださいました。
「私、生まれてきてよかったんだ」
施術後のその笑顔を見た瞬間、
「長い間、一緒に頑張ってきてよかった」と思いました。
そして、「もう大丈夫なんだろうな」と感じました。
現在は服薬も終了し、定期的に病院で経過を確認しながら、ご自身で心と身体を整えられるようになったそうです。
私は、この変化は腸セラピーだけの力だとは思っていません。
Mさんご自身が、「良くなりたい」と何度も立ち上がり、自分と向き合い続けたからこそ、少しずつ変わっていかれたのだと思います。
何度も諦めそうになりましたが、諦めずにMさんと向き合い続けてよかったと思っています。
腸セラピーで大切にしていること

腸セラピーは病気を治す施術ではありません。
それでも、お腹の緊張がゆるみ、身体が安心感を思い出すことで、自分でも気づかなかった感情があふれたり、心が軽くなったりすることがあります。
私が学んだ日本腸セラピー協会の腸セラピーは、
「治す」のではなく「寄り添う」。
痛みのない、やさしいタッチで、お腹を通して自分の体と心に向き合う時間をつくる。
そうすることで、便秘やお腹の張りが楽になるだけでなく、自分でも気づかなかった「本来の自分らしさ」を少しずつ取り戻していく…
私自身、これに魅力を感じて腸セラピストになりました。
もちろん、変化の現れ方は一人ひとり違います。
それでも、お腹にやさしく触れ、心と身体の緊張が少しずつほどけていくことで、その方らしい笑顔を取り戻していく瞬間に立ち会えることは、この仕事をしていて何よりうれしい時間です。
これからも、一人ひとりのお腹と心に寄り添いながら、本来の自分らしく過ごせる毎日のお手伝いをしていきたいと思っています。
Mさんは今、本当の意味でサロンを卒業されました。
少しメンタルを崩すことがあっても、自分で整える術を知り、自分らしく毎日を過ごされています。
「私、生まれてきてよかったんだ」
あの日、その言葉を笑顔で聞かせてくださったことは、今でも私の心に残っています。
これからも、お腹と心にやさしく寄り添いながら、一人でも多くの方が本来の自分らしさを取り戻せるよう、お手伝いを続けていきたいと思っています。

